『nopain island』/川村 透
 
会うって言った、母にもあなたは
うそ
みんな、コンソメスープみたいに透明な、うそ

ふりかえり、あたしは空を見た海を見た誰もいない刺青の少女はいない
ただ、アサギマダラたちのはばたきだけが、
あたしの耳元でくすくすと、やさしい。
あたし、ひとり
あたし、ひとり
ちがう ひとりじゃないきこえるのは、き、る、オト、き、るオト
シャッターを切る音
シャッターを切る音


振り返り
彼女は
僕を視る。

少女は、
うつろに黒い瞳で泣き笑いの笑顔で
とがめるように、いらだちを押し殺してでもいるように、ふるえながら
僕を見つめ続ける

ソーダの、味
オボエテイマ
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