蜜/あぐり
 
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飲まなかった眠剤を
ひとつぶ ひとつぶ
湿った土に埋めて
紫がかった芽が見えてきた朝から
八年間くびをそのままに待ち続けたら
柿がなる

たわわに実る柿の実は
わたしのせいで熟れすぎて腐りました
ぼたり ぼたりと落ちていくその潤んだ赤色を
数えて数えて
今夜も眠ろうとします
夜に積もる言葉をかき集め
ひとつぶ ひとつぶを洗い出してもまったく
あなたに届くものが無くて
途方に暮れたわたしのくびすじにまた
ぼたり ぼたりと柿が落ちる

肋骨を伝わる雨は
ひとつぶ ひとつぶ
窪んだおなかを流れ
わたしのなかからどうにかしておもいでをこぼしてし
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