ヒグラシのヴィオロン/しろう
 


シタールの音が哀切を持って
時を切り刻んでくれるような気がする
立冬を迎えた土曜日の夕暮れには
今年はついぞ聞くことの無かった
ヒグラシが似合うのだと思う
枯れ草を燻す煙がどこからか流れてくる


盲になるならいまだ


バビロンのヴィオロン
ああ、聞こえてきそうだ


ヒグラシ


「あれはいつの日のことか」などとつぶやく程に遠くはなく、
日付を数えられるほど近くはないのが、無垢なる幸福というものだろう。


生きよう、の唄





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