帰りたくない/木屋 亞万
 
届かない
目にするものすべてが

もう駄目かもしれない
明日は
いつ来るのだったか
ずっと待っているのだが
入れ違いになってしまったのかもしれない

目の前にいるのに
行き過ぎていく
まるで
鈍行に見放された駅

雨はしばらく降っていない
濡れてもいないのに
身体が冷える
触るとつめたい肌に
手を伸ばすときは
爪を切っておいてください

体温は高いようだ
だから冷気がまとわりついて
水分を表に出そうとする
空気さえも
身体だけ
通過していく

差し出された手には
いつもポケットテッィシュ
2つ3つを重ね持って
笑顔で
服の上から

[次のページ]
戻る   Point(1)