欲望/いのせんと
 
雨の音を嬉しそうに耳を澄まして聞いているのは
咲き誇ることを諦めた花の声が届くように

したたり落ちる滴の行方を、指先でなぞる
少しだけ深爪の先を
赤く色づいた唇に含んでしまいたい衝動を抑えるのは
ほぼ不可能に近い

ほら、意地悪に笑顔
咲けずにいた花弁を、指先で
ひとつ、ひとつ・・・千切る
痛みではない感覚が、爪先でくすぶる

そうね
もう、美しく咲くことは諦めてしまったから
ねぇ、どうしようもなく
踏みにじるように
汚してしまってよ
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