午後二時、黒猫は日本国の歴史を知る/緋月 衣瑠香
 
涼やかな音
かつかつと硬い音
二つの音が室内で即興曲を作りだす

この時間内に誰がその頭にかの偉人達の偉業を明確に覚えらるのだろうか
いや 誰一人としていないだろう
もしかしたら 能ある鷹は前日のうちに覚えてきているのかもしれないが
しかし 私はそこまで賢くない
だが このゆったりとした時間に
ぴーちくぱーちく言うほどの馬鹿でもない
ただじっと
目を閉じないように右手を走らせるだけ

髪が揺れる
鮮やかな秋の風だ
こんな日の猫は世界の果てを探しに行くのだ
黒い黒い不吉の象徴となって

窓から見える白い月は眩しかった

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