奇病 夢/きりはらいをり
この世界は水没します
誰ともなくそう言い出して
だから、逃げよう
あの電車に乗って
そう言われたわたしは
貴方のことをしらないのだけど
きっと 愛していたらしい
真夏は去ったのに
見慣れたいつもの海岸は
人 ヒト 人間 他人
もうすぐここも
あの水平線に呑まれるのに
砂浜で目を閉じたわたしは
静寂で目を覚ます
隣には貴方
海岸には もう誰もいない
夕陽が真赤に染め上げた海辺の町
切なさを抱いてわたしを見つめる貴方の頬さえ
もう、いいよ
夢だから。
もっといい夢で逢えたらよかったのにね。
やっと微笑んでくれた貴方は
わたしが
妄想した幻だとしても。
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