白岩鉱山軌道の静寂/kauzak
 
気はなくて
鉱山事務所を見降ろせるところはないかと
登山道に分け入るとすぐに軌道が現れる

山肌にへばりつくように
ぬっと中空に渡された桟橋の軌道は
登山道にぶつかるようにプツリと途切れていて

桟橋の奥にある車庫から
トロッコが覗いている
斜め下に目を移すと事務所の脇の軌道上に
山吹色のロコも確認できて

二十一世紀の東京の近郊に
いまだトロッコが息づいている奇跡

鉱石を載せたダンプが下りて行った
ということは
今日の仕事はもう終わってしまったようで
ロコが動き出す気配はなかったけれど

夢中でシャッターを切っていた
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