冬の船出/within
小舟を浮かべて 新しい世界を求めて
僕は旅に出ようと思います ひとりで
生きていく才能のない僕は
誰かが傍らにいてくれないと
ウサギのように震えて死んでしまいそうです
それでもひとりで旅に出たいのです
強くなるためじゃありません
出会いを求めているわけじゃありません
やさしさに触れたいわけじゃありません
母が泣くからではありません
父が妙にやさしいからではありません
風が冷たくなったからです
もう夏の残り香のような秋も終わり
寒気が南に下りてきました
見たこともないものが見える目が手に入ったら
写真を撮って宙に向かって手紙を送りますから
両手を拡げて
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