冬の船出/within
 
小舟を浮かべて 新しい世界を求めて
僕は旅に出ようと思います ひとりで

生きていく才能のない僕は
誰かが傍らにいてくれないと
ウサギのように震えて死んでしまいそうです

それでもひとりで旅に出たいのです
強くなるためじゃありません
出会いを求めているわけじゃありません
やさしさに触れたいわけじゃありません
母が泣くからではありません
父が妙にやさしいからではありません

風が冷たくなったからです
もう夏の残り香のような秋も終わり
寒気が南に下りてきました

見たこともないものが見える目が手に入ったら
写真を撮って宙に向かって手紙を送りますから
両手を拡げて
[次のページ]
戻る   Point(10)