滲みゆく月/中原 那由多
 
   踏切


仮に待たされたと考えて
横切っていく貨物列車の裏側には
「さよなら」さえも存在しない
元々は一方的に出来合いとして扱われていたのだから
どこにも間違いはないと言えるのだが


   撤去


老朽化したビルディングが
どんどん姿を変えていく
流行り廃りとゴーストタウン
一貫して何かを守り続けることを
幸い誰も責めようとはしない(まず人が見当たらない)


   黄砂


曖昧にして逃げていいのなら
正しい答えを探さないで欲しい
自分だけが特別だと思っていたこと
単なる思い上がりだと理解した瞬間が
想像以上に清々しかった


   反転


無意識についた嘘で
鍵を無くさないようにする代わりに
やり場のない痛みに頭を抱える
後ろから聞こえる笑い声は
娯楽としとも悪くはなかった



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