passage/木屋 亞万
 
この道を通るならあなたが愛する文章の一節を朗読しなさい
あなたが創ったものでも構わない
もしもあなたの記憶に誤りがあっても
口からでまかせを即興で唱えたとしても
誰もあなたを攻めはしない
耳をそばだてるすべての受動物は
ただあなたの語る文章から愛を感じようとするだけ

今宵は月がないから星がきれいに見える
来年には街のあかりも消えてもっと輝くだろう
街灯を一つずつ覆いつくそうとしている虫達に会ったなら伝えてくれ
人間が光を失ったとしてもそれは君たちの功績ではない、残念ながら

暗闇には奪おうという気持ちが潜むものだ、金を、身体を、我が物に
最古の匿名性は夜道の背後にあっ
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