天文学者/セルフレーム
 


私の曽祖父は

天文学者だったらしい

何でも

死ぬまで

「赤い惑星には生命体がある」

そう

主張し続けたのだと




天文学者




冬が来る前だっただろうか

肌寒い街の中の
小さな眼鏡屋で

私は茶色のセルフレームを買った

この街を離れることを心に決めた日だったから
いつも帰りに寄るアンティークショップにも寄らずに

真っ直ぐ家に帰ろうと、
そう思った


母親の声で迎えられ
父親の視線で向かいに座った
弟の大きな声に驚いて
妹の制服姿に微笑んだ

弟と妹の同じ顔を見つめて
やはりみんな
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