光景/草野春心
てしまったら……僕のこの言葉も
細かく千切って捨ててしまったら
(「関係ないゴミを捨てるなよ」)
自販機はせっせとコカ・コーラを冷やしている
コカ・コーラは飲み干され排出され海に還る
コカ・コーラの缶は手に取られ潰され再利用される
僕の両手は生きてそれから死ぬだけだ
言葉は心から心へ跳び移ってゆく
そして
そこまで考えて僕は煙草に火をつける
早朝の空気はたえまなくその表情を変えて
それでいて一貫してひやりとしている
何かを決意した女のように
言葉は光景を愛している
でも光景のほうが言葉を愛してくれたことは一度も無い
言葉は光景を愛している
ひたすら
それは気高いことだ
僕はいつかクロード・モネの
「印象・日の出」のような詩を書いてみたい
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