夜汽車/草野春心
 
黒光りする機関銃
空を泳ぐ伝説の鯨の
その横で汽車が僕たちを待っている
愛しのスバルで追いかけようぜ
電気系統はやられちまった
古い思い出はとうに無い}


  *


  (ぼう ぼう
  (ぼう ぼう……



  アスファルトに額をつけて
  死にたくなるぐらい泣きたかった
  誰かの両目が僕らを見ていた
  空気はバナナの匂いがした



  汽笛の音がやんだとき
  君の手が僕を支配していた



  僕は言った。
     「大丈夫さ、大丈夫さ。
      男はいつだって
      夢を見る生きものだよ」


  *


  柔らかな
  夜に、
  僕たちだけに
  許された
  光を、
  見る。
  君のことが、
  好きだ。
  生き続けることも、
  死んでしまうことも、
  怖くない。
  君のことが、
  好きだ。



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