十月の彼岸花/小池房枝
 
ヒガンバナ
もう咲き終わっているのに
熾き火のようにゆらめく赤
心の中で

一面に赤い景色など
見たことがあるわけでもないのに

忘れられないほどの赤など
目の当たりには
出遭ったことないはずなのに
咲く花の赤さを覚えている

花が終わってからも
残りのどの季節の中でも
その赤を
忘れられないでいる

赤い花が倒れ伏したあとに
今頃は
緑の葉がつんつんと
伸びて来ている頃だろう

赤い花は
倒れ伏すときに
自分の後に芽吹く緑のことを
知っているのだろうか

それともただ
何かを信じているだけなのだろうか
戻る   Point(4)