仲秋の名月/あ。
 

あまりにもそれはひとりぼっちで


混雑を知らないことが幸なのか不幸なのか
知ってしまっているわたしにはわからないけれど


地元の駅についてから和菓子屋に立ち寄り
小さな月見団子を二つ買った
いつもよりほんの少し控え目の夕飯を済ませ
ベランダの窓を大きく開ける


風流な縁側もないけれど
小さなベランダから見上げる月は
大橋から見るものとまるで変わりなく


まあるいね
うん、まあるいね
かわいいね
うん、かわいいね


昨日と同じ夜は過ぎる
わたしは月に見惚れたふりをして
きみの横顔をそっと盗み見る

戻る   Point(15)