仲秋の名月/あ。
ず
あまりにもそれはひとりぼっちで
混雑を知らないことが幸なのか不幸なのか
知ってしまっているわたしにはわからないけれど
地元の駅についてから和菓子屋に立ち寄り
小さな月見団子を二つ買った
いつもよりほんの少し控え目の夕飯を済ませ
ベランダの窓を大きく開ける
風流な縁側もないけれど
小さなベランダから見上げる月は
大橋から見るものとまるで変わりなく
まあるいね
うん、まあるいね
かわいいね
うん、かわいいね
昨日と同じ夜は過ぎる
わたしは月に見惚れたふりをして
きみの横顔をそっと盗み見る
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