フレンチトースト/百瀬朝子
 
ジュジュジュワーパチパチパチ
バターの香りが換気扇に吸い込まれる
その途中、あたしの鼻腔を刺激して
あたしの口の中をいやらしくしていく

すっかり高くなった秋の空に馳せる
ふと気がつくと フライパンではちょうど
食パンが美味しそうな焼き色をつけていて
それはまるで ここにはいないはずのあなたが
知らせてくれたみたいな何気なさ
そんな瞬間が うれしい

片面がフレンチトーストになった食パンを
ひっくり返す
あたしの心はひっくり返ったりしない
だってあたしは裏切らない
香ばしくなったバターのにおい

カフェオレはインスタントでいいや
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