酒場にて/チャオ
 
いようのないものを追いかけて、昔を省みるのはやめよう。そう僕が自覚したとき、僕の少年時代は終わった。
僕の祖母が、ちょうちょと蛾を識別していたとしても、蛇と犬を識別していたとしても、ホームレスと財布を盗まれた人を識別していたとしても、あのころの僕にはすべてが何も大差のないことだった。
誰かが、「知るということは、無限に悲しみが増えることだ」といった。

どこにも属さないで生きることは、僕を捨てることなのか、僕を得ることなのか。今の僕にはわからないけど、あのころの僕のように、無知で、わがままで、それでも、僕を手放さないでずっと生きれたらと思う。

「僕は僕が輝けるためだけに生きてきた」
戻る   Point(1)