立待月/
 
棚引く雲が
鐘の音とともに
宵闇に溶け
片流れのひさしの影に
桔梗一輪
慕うは天に
焦がれるは月に
裂けた花弁
やがては朽ちて
晒す姿が見窄らしくとも
募る想いは重なりゆく

門扉に続く石畳
響く音は
添え輿の歩みに似て
ともすれば
現を遮り
幻を引き入れる
朧に霞むは
家並みの佇まい
邯鄲の鳴き声
できることなら
逃れるために
踵を返す

漆喰の蔓草
水路の淀み
隠した姿を
浮かび上がらせ
重く傾く月は
溜め込んだ虚言を
吐き出して
やがては
泥濘に落ちるのだろう

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