「秋のわかれる」/月乃助
 
道行へ
投げ堕とす影さえ、その長さを高さに等しくする
均等に分割された半分が終るのでも、
残されたものが始まるのでもない日
の影が 陽をひしゃげたように
疲れたゴムのありようもない光沢を見せる

― 眠りから覚めても、ひとりおれのすることなど、
 もう何もない。ここには、この陽のなかで…

うずくまった鉄屑の降り注いでくる想いが、
わたしの壊れた車のような右足を
残された後輪が問いかける 
― おまえも失ったのだろう
― いえ、わたしは無くしは、しなかった
   片足をいやになるほど壊しただけ
ながい陽のなかでの爬行、今では、回復した重さに
いつまでも、そこに立ち尽くして眺めていた
エンジンさえない、
車という存在理由さえも削り落とされた、
鉄の塊のあわれが、
後輪をつけたこの体に 人車として蘇生する想いだけが
ふらちな 合体物の姿となって
そこに
現れて消えていた






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