想起の中で/かんな
 
駅の東口を出る、二、三歩の、携帯のメロディ
ごめん、やっぱり会議で遅くなる。
待ちぼうけに、溜息が渇いた
不似合いな街の、バックグラウンド、どこか鮮やか

歩きついた香水店の、誘惑の一滴
そして探し当てられた
流れる時のフライング、いまだ会えない
店員との会話中の、携帯のバイブ
これからそこまで行くよ。
その一言はどこ、までも軽く上空へ
コレ、遅刻のお詫びとして買ってもらったらいかがです。
微笑む店員の軽やかな下心、わたし程じゃない
振り向いた店先、とあなたの顔、少し汗をかいて、
お詫びにコレ買うよ。
グレーのハンカチの、汗で濡れたその心中に
くすくすと二つの下心、
[次のページ]
戻る   Point(6)