坐っているもの/岡部淳太郎
天気はさまざまなものを
当たりまえのものであるかのように
人に見せる
そうして見せながらも黙っている
黙っているから人は勝手に騒いで
動き回ってくれるのだ
道の真中過ぎに
坐っているものがあり
それはただ坐っていることで
坐っているものとして自存している
私の時はとうに終った
そう思わないと目に映る
花や耳障りな鳥の声などが
気になってしかたがないのだ
それらが在るのを当たりまえのこととして
日々の天気の変化に堪えている
傍をさまざまな人が通り過ぎ
その中に私も混じっていたはずなのだが
あの坐っているもの
脱落して今日の蒸し暑さや明日の
風雨に叩かれているだけのもの
あれこそけっして立ち上がることのない私の心の
ほんとうの姿ではなかったか
(二〇〇九年六月)
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