こい/はるこ
 

「すきなんだよ…」
蝉の声と重なってよく聴こえないよ、
ねぇ そんな顔をしないで
ブラウスの裾掴まれても困る
だってわたしは あのひとのもの
つい最近だけど かたおもいだけど
それでも 好きなんだよ すきなの


言いたくて でも声にならなくて
ブラウスの裾 だんだんと熱を感じている
いつまで掴んでいるの ねぇ
放して 行かせて
あのひとのもとに行かせて


「ごめん…」
しずかに呟いた声 蝉の声が止んで
お互いの息遣いしか聞こえない
いつの間にかブラウスの裾の熱がなくなっていて
ふり返ると   なきそうなかお してた

見るんじゃなかった
みるんじゃなかった

あのひとをみているわたしと
そっくりおなじようなかおで わたしをみていた
あのひとがそんなかおをしてくれないことがわかっていて

それでもわたしはあのひとがすきです

あのひとがすきです
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