元気な脳/なかがわひろか
きやしない
夜になっても眠らないし
朝から大きな声で歌を歌って
私はすっかり疲れてしまった
結局私は新しい脳を元の場所に捨てた
新しい脳は飛びださんばかりに
私の頭の中を駆けめぐっていて
けれどいやいやを繰り返し
なんとか捕まえて取り出した
また誰かが拾ってくれるさ
私は脳を段ボールに入れて道路脇に置いた
そして私は空っぽの頭で考えた
私の前の脳はどこに行っただろう
誰かこの脳を拾ってくれる人はいるのだろうか
そして私は思った
私には考えるための脳がもう無いということに
そして私は気がついた
私はそのことに気づくこともできないのだということに
(「元気な脳」)
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