椅子の上で膝を抱えていいことだけを思い出す/藤原有絵
場所なんて無いと
ご都合主義で結構と
捨てられていくものどもに言い訳をする
「乖離するくらいなら
始めから知り合うことなどなければよかったのに」
当時の切実さが閉じていたベージからはらり
何度も思ったこと
今となってはどうしてかと首を傾げてしまう
戻りたい分岐点はあっても
そこから確実に途絶えてしまう縁など思えば
考えるだけなのに竦んでしまう臆病さ
愛おしさ
よかったことをたくさん覚えている
とは 何と素敵なことだろう
持続する感情など無くとも
ただ存在し続ける記憶があって
そこに微かな熱がある
口にするのも惜しい
カラリと笑ってそっと胸に留めたい
思い出すだろう
いつかそれが
一瞬の感覚と変わってしまおうとも
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