ジッパーで世界は隔てられている/瀬崎 虎彦
神妙にいたすしかない
まどろっこしい夢の淵で
足を踏み外し一路はるばると
緑のさやを開いていく
ジッパーで世界は
夢とこちらに隔てられている
片側通行でないので
夜は眠る決まりなのだ
今年の一月フランスで
着いたら一面の雪で
気温も零下で寒い
キレイとか思う余裕
全くなかった
ただ早く逃げたかった
暑さ寒さを逃れるために
場所を移動するという発想は
昔の人にはなかったけれど
その場合やはり夢に逃げたのであろうな
唐突に街路樹が折れていて
一本だけ道をふさいでいるので
ああこれは現実離れしているが
現実のことなのだと夢のように思う
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)