二つの太陽/なかがわひろか
空に二つ目の太陽が咲いた朝
それはきっときれいだったはずでしょう
誰もがその美しさに目を奪われたはずでしょう
咲いたばかりの太陽は
その美しさを誇示するように
空一面に広がりました
きれいな光の中で
私の手は頭は首は体は足は
溶けてゆき
ああ、最後に見た景色が
この風景で良かったと思ったのです
私のことよりも
蝉はまだ鳴いているのかと
私はそればかりが気になって
せめて蝉も
この光に包まれて謳えばいいと思います
体は熱く
若く生命を湧きだたせていた私の体は
徐々に確実に消えていきます
太陽はやはり一つで
幻のように生まれたもう一つの太陽は
そう私の体の中に入り込みました
私は太陽になって
地球を暖め、照らすことでしょう
ああ、きれいな太陽になって
地球を照らすでしょう
(「二つの太陽」)
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