ひとりと独り/殿岡秀秋
監督は代打に指名する
どうしても
打とうとおもう気持ちが
湯気のようにからだから
立ちのぼるのがわかる
相手チームの投手もぼくの分身で
豪速球を投げてくる
初球のストレートを叩いて
センター前にヒットにして
一塁ベース上で
両手を空にさし上げる
狭い庭の巨大なグラウンドに
観衆の喚声が
地響きのように拡がる
ベンチにいる仲間たちの拍手も見える
小学校でみんなといるときに
ぼくは椅子におかれたまま
動かないピノキオで
庭でひとりでいるときに
信頼できる仲間がいる
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