つきのひと/ゆるこ
私の友達と云う人々は、つきのひとが多い
いくつもの、ものすごいクーデターを隠し持ちながら
淡々と歩武を進めているのだ
夏の終わりに生まれるさびしいさびしい月下美人のように
ひっそりと、しなやかに
蠟燭をともさずに歩くのだ
クーデターに落ちた日は悲惨だった
つきのひとは温厚なだけに、怒ったりするとものすごく怖いのだ
私のありとあらゆる臓物を一瞬で冷やし、
クーデターの一部にしようとする
私は必死に体に火を灯したから
−6℃の地獄からは逃れられたけれど。
つきのひとが笑えば、太陽が10km近づく
つきのひとが泣けば、太陽が10km離れる
天変地異を起こしながら前進する彼らを責める術を誰も、持っていない
不思議なスキルを抱えたまま
命を運ぶ彼らを、私はどうしようもないくらい愛しく感じるのだ
瞳を閉じれば夕日の風が微笑む気配がする
手を握れば冬の朝の氷の様に冷たい
世界と連動しながら、世界と同化している
世界を否定しながら、世界に生かされている
かわいい神様からの才能
かなしい神様からの最後の産声
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