ドア、閉まります/吉田ぐんじょう
だった
とか
眼を覚ますとそこは江ノ島だった
なんてことはしょっちゅうであった
半ば自暴自棄になっていたのだと思う
そういうときは改札を抜けて
明るくなるまでひたすら歩いた
海のほうへ行けば
安らかに眠れる気がしたから
潮のにおいをたどっていったのだけど
江の島も鵠沼も
どんなに歩いても
なかなか海にはつかなかった
・
電車に乗ると窓の方を向いて
立ち膝で座る癖がある
流れてゆく窓外の景色はどうにも広大で
きっとわたしは世界のすべてを見られない侭
死んでゆくんだろうなと思う
脱ぎ捨てた靴は不揃いに散らばって
向かいに座っている高校生が
荒々しい息をしな
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