たまねぎ/かんな
プラスチックの板に
七センチの穴が空いていて
父にそれを手渡されて
手伝いがはじまった
実家での農作業は
ずいぶんと久しぶりで
この蒸し上がった季節に
汗の一つもたらそうかという
気まぐれだった
たまねぎだった
七センチの穴を通るものと
通らないものにわけていく作業
それだけ
それだけを
黙々と、時おりラジオに耳を傾け
たまねぎを選別しつづけた
ふと思考が飛ぶ
こうやって
一つ一つのたまねぎという
いのちを育てる父の手で
同じ手で育てられたわたしという
いのちもまた
この大地にしっかりと根ざした
尊いものなのか
なんて
たまねぎだっ
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