空に還ったものに捧ぐ/あ。
たしの父親となる青年で
連れて来た迷い犬をむげにも出来ず
結局祖父母は共に暮らすことになる
犬はたちまち店のアイドルとなった
飲食店に動物を、などど言うものはひとりもいなかった
常連客に可愛がられ、食べ物をたっぷりと与えられ
丸々と太り大きくなり、愛想良く尻尾を振っていた
それから間もなく
ある客によって犬は連れ去られてしまう
常連客でもなく、誰と言う特定も出来ず
祖父母はなくなく諦めたと言う
わたしは祖父の顔を知らない
祖母との思い出も多くはない
それでもよく覚えているのは
わたしの家で犬を飼うことになったとき
誰よりも可愛がり膝に乗せていた後ろ姿
孫のわたしたちも幾度となく味わった
愛情を惜しみなく含むしわの深い手のひら
うちで飼っていた犬が空へ還って一年になる
祖母と会えているのだろうか
わたしも会ったことがない祖父はきっと
祖母と一緒にいるはずだから
同じく動物好きなひとだと言うから
あの子を大事に可愛がってくれているのだろう
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