存在と不在とそのあいだ/餅月兎
二十四時間操業の工場で
一年前と同じスケジュールを働いた
一年前が二年前でも
三年前でも五年前でも
十年前でも同じであり
今日は雨が降っている
傘の影
右と左
交互に前に出る
汚れたズックのつま先を眺めていた
部屋に着き
生きる為の事をすませたあと
日記帳をひらく
未記入の今日に
罫線がゆがんで見える
わたしが部屋にいるあいだ
あの工場は何を作っているのだろうか
ゆがんだ罫線に従い
「今日は雨だった」と書き込む
眠る為の厚い遮光カーテンをひいた
雨音が少し遠くなり
今日が死んだ
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