二十歳を過ぎたモラトリアム/百瀬朝子
あたしはそんな彼らを踏みにじりたくなる
全身で拒絶したい
それができないあたしは揺れるから
息を切らして戦っている
苛まれるのはいつも夜
月は出たり引っ込んだり隠れたり
今夜は星がよく見えるので月は引っ込んでいるのだろう
孤独もいっそ引っ込んでくれればいいのに
あたしを照らすように見下ろしている
不安で寝苦しい夜は
流れる雲の過ぎ去る一瞬の影に孤独を隠そう
そのわずかな隙に眠りについてみせるから
二十歳を過ぎたモラトリアムは
働く明日のために眠る必要はないのです
ただ夢を見るためにだけ眠るのです
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