扉と掌を隔てる被膜/uwyeda
それでもって突如その門の前に現れた彼は私にこう問うわけだ。
「お前は一体何者なのか。ここを通ることが出来るのは、自分が何者かを知っている者だけである。」と。
ずいぶん不遜なことをいう門番じゃあないか。もちろん私は答えた。「いま貴方の前にいる私は、20歳の男子大学生で名前をuwyedaという。この門の先に用事があってここへ来た。身分を証明しろと言うなら学生証を提示してもいい。」
「この命をかけてもいい。この坑道からは石炭の一欠片も出てはくるまい。」
ところがだ。彼は私の答えに満足しなかった。
「私は自分が何者であるかを知る者だ。お前は自分が何者であるかを知らざる者だ。帰りたまえ
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