ギムレット/智鶴
 
すべていなくなる夢を見ながら
君に似た花を枯らした
テーブルクロスの染みになったギムレットが
僕にはただ、滑稽に思えた

左手に滴る血を感じたまま
深く深く
どうしようもない
何にも触れない空間で
君の視界に堕ちていきたかった
罪と知って、真実を欺いた
そんな価値は見いだせなかったけど
思い出せない香りだけ

クローバーの生い茂る庭で
いつの間にか孤独になった
小鹿の哀しい鳴き声を聞いた
一瞬笑った君の眼は
深海魚のように碧く、暗い

僕を映さないように

君が僕を攫って行った秋の日から
夢のように世界が色褪せるまで
一秒の奇跡もただ、吐き出されて
君は幻だと信じていたかった

君の柔らかい海月のような心臓も
仙人掌のような息遣いも
すべて幻のように忘れさせて
閉じ込められた鳥籠の中で
笑っているよ
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