さみしがり屋のオニ姫/ヨルノテガム
ない
いっそ、足指かたまねぎリングをがじりと甘噛みして
震え上がらせてやろうかと思案した
しかし、到底できるはずなく
女のスヤスヤやかに寝る呼吸調子に気持ちが急に優しくなって
オニオンちゃんを前に こちらも眠り入ってしまった
あれから
ほんのひと月ふた月しか経っていないと思うが
女の顔をどうにも忘れてしまい 普段、タマネギを見る度に
あの細足の白さが お箸のように揃っているのが思い出される
サヨナラの前
女は 知らないわよ おバカな奴隷さんね と
きれいな高い声で言ってこちらをロクに見ず
鏡の前で鬼化粧に余念がなかった
女は 金を余分に置いて
よく眠れたわ
と 言い去った
戻る 編 削 Point(0)