忘れ物/殿岡秀秋
 
か動かない

腕を虫が張っていく感じがする
心臓のあたりが
木の根に挟まれたように
苦しくなる

見栄えのしない作品ができた
忘れ物したことさえ
気づかれなければ
作品の出来などどうでもよい

今日の授業を終えて
校門を出ると
物語の世界に入るように
小学校のことを忘れる

家について
着ていた服といっしょに
その日に押し着せられたものを脱ぎ捨てる
なんで学校なんてあるのか
ぼくは叫びたくなる
普段着に着替えると
母からおやつをもらって
外へ遊びにいく

夜になって宿題をするときに
小学校が甦ってくるが
考えないようにする
だから先生に言われたことも忘れてしまう



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