忘れ物/殿岡秀秋
か動かない
腕を虫が張っていく感じがする
心臓のあたりが
木の根に挟まれたように
苦しくなる
見栄えのしない作品ができた
忘れ物したことさえ
気づかれなければ
作品の出来などどうでもよい
今日の授業を終えて
校門を出ると
物語の世界に入るように
小学校のことを忘れる
家について
着ていた服といっしょに
その日に押し着せられたものを脱ぎ捨てる
なんで学校なんてあるのか
ぼくは叫びたくなる
普段着に着替えると
母からおやつをもらって
外へ遊びにいく
夜になって宿題をするときに
小学校が甦ってくるが
考えないようにする
だから先生に言われたことも忘れてしまう
戻る 編 削 Point(8)