買い出し/
kaeru
風の止まった六月の午前
そよとも動かない樹々の枝たち
四方に延びていく電線も
雨の降らないくもり空も
何も動かない風景のなかを
ラジオの歌だけを鳴らしながら
ぼくは車を走らせていく
誰も出てこない土曜日の午前
昔読んだ世界が滅ぶマンガの
見開きのコマの街のように
ぼくはまた遅れてしまったか
そんなことをまた思っている
助手席には買ってきたばかりの
一週間分のお茶のペットボトルが
いつまでも少し揺れていて
きみはまだ眠っている土曜の午前
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