「希望の丘」/プル式
 
はいつも
暖かな日差しや、爽やかな風
青い空と、そこに浮かぶ柔らかな雲
たくさんの草花や、たくさんの命
それらの全てが溶けだしていた
今はもう、何処とも知れないそれを
男は排水溝の臭いのする湖に
やはり足を浸しながら描いていた

街の喧騒から少し離れた場所に湖がある
対岸には昔、森があったそうだ
この街がまだ小さく、優しい風が吹いていた頃
そこにはとても偉い絵かきが住んでいて
草や、花や、そこにある、沢山の命と
小さく、美しかった町を描いていたのだそうだ
今、一枚だけ残っている絵は
この湖畔から見えた風景なのだろう
今は小さな工場が建っているその丘は
昔、希望の丘と呼ばれていたのだそうだ。

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