待機線/kaeru
 
線路の脇に咲いている菜の花の細い列
誰のものだろう止められている自転車
真新しい制服の群れからこぼれる音楽
まだ来ない電車を待っている春の駅の

たゆたう人々の視線の高さを蝶が飛ぶ
過去から未来あるいは未来から過去へ
蝶の軌跡と交わる今日の朝ぼくらの朝
菜の花の揺れ幅で繰り返される日々の

捨てられる紙面に踊る見出しの文字や
次々に替わる首相の顔 似通う誰かの
傾斜の重なりに怯えながら過ぎる現在

定期券に記された日付だけが確かな春
草臥れてはいない余所余所しくもない
身体を預けるように踏み出す朝の一歩
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