待機線/kaeru
線路の脇に咲いている菜の花の細い列
誰のものだろう止められている自転車
真新しい制服の群れからこぼれる音楽
まだ来ない電車を待っている春の駅の
たゆたう人々の視線の高さを蝶が飛ぶ
過去から未来あるいは未来から過去へ
蝶の軌跡と交わる今日の朝ぼくらの朝
菜の花の揺れ幅で繰り返される日々の
捨てられる紙面に踊る見出しの文字や
次々に替わる首相の顔 似通う誰かの
傾斜の重なりに怯えながら過ぎる現在
定期券に記された日付だけが確かな春
草臥れてはいない余所余所しくもない
身体を預けるように踏み出す朝の一歩
戻る 編 削 Point(3)