皮を剥ぐ/ゆびのおと
たとえば
月明かりの下 大きな使い勝手のいい山刀を研ぐ
水を跳ね返す 月の光と 鋼の地肌
にごる にごる水を
細く落とすひしゃくからの流れが
零れ落ち 湿った土の上を蠢きながら流れてゆく
夜明けには
木の皮を剥ぐ
注意深く むやみやたらと傷つけないように 皮だけを
・・・しらじらとした夜明けに見る むき出しの木の幹は きっと 綺麗だろう
一列に並べられた木の肌はかすかにたわみ 乾いてゆく・・・
乾ききる前に おまえには もう一仕事
潰され 晒され 細い柔らかな縦糸となったおまえに編まれてゆく
銀の記憶を
こわさぬように さらさぬように
薄闇の古木の洞に掛けることを。
物語のタペストリーが 馴染み 風化して
木の一部となり果てるまで
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