世界とゆびきり/百瀬朝子
 

時の流れに溶かされてゆく

形あるものにとらわれて身動きできなくなっていた
もたらされた自由は僕を救うことはなかった
水槽の水はにごっている
溶けたものたちが混沌としている
整理整頓が苦手な僕は散らかった部屋をただ眺めている
かえらないものを嘆きながら

星の瞬きに目を覚ます
届かない願いは流れて消えた

僕らは約束をかわしていた
大切なものをそっと抱きしめて眠ること
生まれたときからの約束
世界とゆびきりした二十三年前の今日
僕は産まれたんだ
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