世界とゆびきり/百瀬朝子
僕らは約束をかわしていた
生まれてから今日まで一人で生きてきたつもりになって
世界なんてクソ喰らえって
地面に唾を吐いたりして
反抗心を燃やすことばかりに夢中になって
大切なものをそっと抱きしめる心を忘れて
いつかかわした約束もどこかへ置いてきてしまった
朝日を浴びて眠ろう
夜は一人がこわいから
右手の小指を眺めて焦燥
何かしなくちゃ
でも何を
わからない
もう戻れない
それだけは知っていた
この足は一歩も前に踏み出せないままだけど
二人の時間はなかったことにできなくて
それなのにあの時感じたよろこびやぬくもりが
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