『山原水鶏、蒼穹に弧描く』/Leaf
 
そんな些細な鳴声
気にしな、



いかい?

あのマングローブの奥から蝙蝠達の会話が聴こえた
垂れ流したのはお前等じゃ、の声がいずこからか運ばれた

確か、茂みの先から暮れなずみ
臙脂に染まる夕影は
膝を抱えて独り蹲った、蹲った



誰がどこでどう間違ったのか
何故か私は鬱蒼とした山原の茂みで見つかった、と
彼は刀を鞘に収めるように月季紅色の嘴を閉じた



翔べない羽根は我が手とは思えない
私はこの両手を放棄し、掌合わせも腕組みもしない、と
意固地になって彼は畦道を駆けた



時は貴重だという講釈には与しない
私は順応とか進化とかい
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