陽炎の記憶/あ。
 
しなびたような風にはたはたと
力なく揺れている黄色い旗

近くの小学校からだろう
校内アナウンスが外に漏れ聞こえる
時折キンとした音が混じりながら

光化学スモッグ注意報が発令されました
日陰を通って下校してください

神社の鳥居をくぐり
樹木が作り出す大きな影の下を歩く
8ミリフィルムの映画みたいに
どこか懐かしい映像が広がる

古い押入れの奥に似た香りを吸い込み
たくさんの生命の記憶を感じようとしてみる
正確に感じ取れたかどうかはわからない
もしかしたら何も変わっていないのかもしれない
それでも意味がないとは思えなくて

通り抜けてしまえば
そんな懐
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