求道者/影山影司
幼い頃、私は炭火に憧れていた。
休日、父に連れられて入った山野。街灯一本無い川辺で、良く炭火を囲んだ。
米軍のハライサゲだと父が言う。大人でも一抱えほどある、鉄製の缶の中に紙袋の口をあけてざらざらと炭を落とす。炭はそれぞれ、マグカップに入るか溢れるかほどの大きさで、それを注意深く組んで空気の道を作ると、父は火を灯した。
コツがあるんだ。マッチを擦るだけじゃつかないんだよ。父は必ず何か工夫をして火を点けていたが私はどうにも思い出せない。やや間を置いて、正体の無い火炎が揺れて缶の中は灼熱の様となる。
私が缶の中に見入っていると、父は勘違いして「腹が減っただろう、今スープを作ってや
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