焚書/岡部淳太郎
 
花がいままさに
ひらかれようとしていて
うたが人知れず
うたわれていても

読みかけの本の
頁がひらかれて
そのつづきが
つづかれてある言葉が
読まれようとしていても

なおもひらかれないものが
あるだろう

それはやがて焼かれ
その断片は煙とともに空に
ひらかれた空にのみこまれては
落ちてゆく

日々こうして焼かれてゆくために
ますます暑くなる世界
枯葉の下にはいまも
くるった言葉が
とじられたままで
埋められている



(二〇〇九年四月)
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