抽象物/岡部淳太郎
――にんげんは
抽象する動物なんだな
(北村太郎「悪の花 2」)
鳥の目醒めがあって
それから少し遅れて
人間の目醒めがあって
それからだいぶ遅れて
私の目醒めがある
遅刻するのにはもう
ずいぶんと慣れた
今朝の時計の鳴り方も
私には物足りなかったようだ
だがこうも毎日
毎時毎分毎秒
遅刻ばかりしていると
そのうち私専用の
うるう年が出来上がるのではあるまいか
鳥の目醒めはいつも早いが
その早さを寒さにふるえながら
素描するのは
いつも人間の役割だ
私ほどではないが
人間もそう早く目醒められるわけではない
自らの遅さ
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