空虚を越えて/百瀬朝子
 

死にたくなる前に
この息よ止まれ
生まれ変われるのなら
過去がいい

  ひとりぼっち募る不安に
  空虚が埋め立てられてゆく

まるで、煙で部屋が満ちてく
それは満足だとはいいがたく
区別をつけるのは簡単だが
どっちつかずのわたしがいる

授かった部屋での記憶
思い出す間もなく消失
しがみつく必要のない記憶は
消えたところで支障はないが

わたしはわたしを育んだあの
部屋からとびだした
誰もが通る道をくぐりぬけ
苦悩の果てで光を浴びるため

  わたしは
  ひとりぼっちの空虚を越えて
  一瞬の快楽を手に入れる

生命は、
幸福を連れて
地上にやってきた
ノックしつづけた長い日々にさよならを
この手で、望んでノブを掴めば
いつだって扉は開かれる

甘えてばかりはいられない
ひとりぼっちは終わったから
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